社長日誌―特別寄稿:見えない境界線

中澤達浩が日々の家づくりを日誌にしてます。

【特別寄稿:見えない境界線】我が家が唯一、無防備になれる聖域であるために

投稿日:2026年6月19日

本記事は、日々他者の命と向き合う医療の最前線に立ちながら、この福島でA.C.Regalieの高性能住宅を選択された建て主様からお寄せいただいた、真実のインサイドストーリーです。


【数値の裏付け】科学と誠実さがもたらすファクト

アリストテレスは、こう言いました。
「誠実さのない知識は、悪徳である」と。

「100%開示された誠実なファクト」は、シミュレーション通りの動きで結果を出してくれます。もし、その前提が崩れた世界など、恐ろしくて一歩も足を踏み入れることはできません。

私たちの職場の棚に並ぶ超精密な医療機器の数々は、寸分の狂いもない測定データで裏付けられています。それらは私たちが日々、他者の命に関わる決断を下すために必要不可欠なものです。その大前提が崩れた世界など、恐ろしくて一歩も足を踏み入れることはできません。

【数値を失った言葉の軽さ】カタログに踊る美辞麗句の虚構

しかし、そんなシビアな世界から一歩外へ出ると、住宅業界は奇妙なほど曖昧な言葉で満ち溢れていました。手渡された華やかなカタログには、未来の暮らしを夢見させる美しい写真と、「最高峰」「次世代」という耳あたりの良い言葉ばかりが踊っています。

私はただ、静かに「では、この表示されている数値の根拠を見せていただけますか」と、カタログを手渡した彼にそっと問い返しました。私が、ある信頼できる人から教わり、知っている「建築物理の数値」と照らし合わせ、確認をしたかっただけなのです。

しかし、彼は何事もないかのように笑顔で言葉を重ねました。
「一棟ずつの測定はコストがかかりますので行っていませんが、当社の基準なら十分にクリアしています。安心してお任せください。我が社の最新技術なら、数字に表れない安心が手に入ります」

【今昔の話】ブラックボックス化された性能への不信

もし私の仕事で新しい医療機器を導入する際、メーカーから「数値は出せませんが、最新の技術が入っているので安心です」と言われたら、私はその機械を信じる事が出来るでしょうか?

性能のブラックボックス化。それは、誠実さの対極にあります。数値を測定せず、計算書すら出さない家を信頼するということは、根拠のない神話、あるいは古代ローマ帝国や日本の江戸時代初期の治療を信じ込むことと同じではないでしょうか。


【あるいは静かなる調和】未来の格下げが決定している家

ナイチンゲールは、こう言いました。
「建築空間が健康に与える影響を無視することは、最大の過ちである」と。

社会の中で生きるということは、自分の選択がどこかで他者と繋がっていることを意味します。その中で、私たちが求めるべき「安心の正体」とは何でしょうか。

カーボンニュートラルという、私たちが避けて通れない未来のタイムラインがすぐそこに迫っている現在。世間で今持て囃されている程度の基準の家は、数年後には国の省エネ制度の底辺へと格下げされることがすでに決定しているらしいのです。

【影響という名のリスク】目に見えない壁の裏側で完成する最悪の環境

私が本当に恐れたのは、自分の選択がもし、目先の華やかさに目を奪われ、気流や壁の呼吸を考慮できていない家を選んだとしたら?という未来でした。エネルギーの無駄や脱炭素という社会の潮流に背を向ける建物を、この先ずっとこの街に残してしまうことになる。それは、公の利益を重んじるべき人間の判断として、あまりにも不誠実な爪痕ではないかと思ったのです。

それだけではありません。家族へのリスクも存在します。壁の内部で静かに進行する結露、それに伴う目に見えないカビの繁殖。それが、そこで暮らす家族の呼吸器を蝕み、やがて平穏な日常を奪っていくのです。

冬の朝、室温が10℃近くまで冷え込むような家で、ある日突然、身内がヒートショックを起こして救急車を呼ぶ事態になったとしたら。私が本当に守るべきだったものは、大手のブランドという「虚構の安心」だったのか、それとも「社会の虚像」だったのか?私は、救急車を必要としないほどの完璧な健康環境が欲しかったのです。

【反省は先に出来ない後悔】断熱等級7(G3)という必然の選択

だからこそ、私にとって「断熱等級7(G3)」という選択は、単なる自己満足の数字ではありませんでした。それは機械の力で無理やり室内環境をねじ伏せるのではない。形だけの美辞麗句を並べるものでもありません。

地球環境へ静かに貢献し、同時に、家族の健康被害というリスクをこの世から最初から抹消することを意味していました。自分の判断が、社会に対して正しい貢献を体現できているという確信。これこそが、私たちが真に求めるべきリスクヘッジの形なのです。


【無音の聖域、翌朝への帰還】極限まで擦り切れた交感神経を解く場所

マザー・テレサは、こう言いました。
「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい、それはいつか人格になるから。人格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから」と。

張り詰めた緊張のなか、連続する勤務を終えます。他者の人生の重みを背負い続けた脳は、極限まで擦り切れ、交感神経は悲鳴を上げたまま、リラックス状態へ切り替わることを拒んでいます。外に出れば、日中の騒音と、容赦のない光に満ちています。

しかし、帰宅し玄関の扉を閉めた瞬間、私の廻りの世界は一瞬で変貌をとげます。そこにあったのは、完璧な「静寂」でした。街の喧騒を、文字通り跡形もなく遮断していたのです。寝室に足を踏み入れると、まるで世界から音が消え去ったかのような、図書館並みの静けさが私を包み込みます。ああ、感謝しなければいけません。「職人たちの精緻な手仕事」からもたらされる、この奇跡的な時を。

【無音・無風、私のサンクチュアリ -聖域-】

…そして何より、そこには「風」がありませんでした。機械が稼働する不快な音も、肌を撫でる冷たい風も、一切存在しないのです。ただ、圧倒的に快適な輻射熱だけが、部屋の空気を優しく満たしていました。光も、音も、風も、私の感覚を無駄に刺激しない。張り詰めていた神経が、ゆっくりと、けれど確実に解きほぐされていくのが分かりました。

不快なノイズを極限まで排除したこの空間だけが、擦り切れた脳を最短時間で深い睡眠へと誘い、心身を究極の休息へと導いてくれるのです。機械を過剰に消費するのではありません。自然物理の摂理に従って構築された完璧な朝が、そこにはあります。

翌朝、目が覚めたとき、私の頭は驚くほどクリアで、昨日までの疲弊は嘘のように消え去っていました。「だから、私たちはここを選んだのです」

かつて同じ道を歩む職場の先輩が、静かな確信を込めて私に語った言葉が、今なら鮮明に理解できます。私たちは、他者の命を救うために戦う。その過酷な戦いを支えるための「聖域(サンクチュアリ)」が、この家だったのです。

科学的に構築された聖域の向こうにある完璧な朝があるからこそ、私は今日もまた、背後の憂いを一切断って、最最前線の舞台へと帰還することができるのです。


ABOUT AUTHOR / この記事を書いた人

中澤達浩

誕生:1967年3月(魚座)
出身:山梨県生まれ
趣味:釣り

株式会社A.C.Regalie 代表取締役

中澤 達浩 Tatsuhiro Nakazawa

一級建築士
一級建築士事務所所長
専攻建築士(住宅専門設計士)
住宅省エネルギー設計・施工技術者
住宅品質確保法設計士(長期優良住宅の上位版)
気密測定技能者
住宅収納スペシャリスト
整理収納アドバイザー2級
その他多数

設計と施工の両輪で磨き上げた「本物の家づくり」への軌跡

■ ゼネコン設計部から「職人・現場監督」の修行時代へ
東海大学を卒業後、大手ゼネコンの設計部に勤務。その後、平成5年に「現場の真実を知るため」に退社し、職人の世界へ。全国指折りの匠のもとで3年間の職人修行、さらに3年間の現場監督として研鑽を積む。師匠から免許皆伝を受け、独り立ちする頃には、多くの顧客に恵まれる人気の現場監督となる。

■ 1999年9月 〜 福島県への転居と拠点の設立
子どもの誕生を機に、配偶者の実家がある福島県へと転居。福島で「本当に良い家づくり」をゼロから目指し、2001年に建設会社「誠栄ハウス」を共同出資で設立。同時に設計事務所「ビルド・ファクトリー設計事務所」も立ち上げ、設計・施工の両面から福島の住環境へアプローチを開始。

■ 2014年11月 〜 「株式会社A.C.Regalie」設立
確固たる実力と独自の建築思想を遺憾なく発揮するため、独立して建設会社「株式会社A.C.Regalie」を設立。多くの顧客に熱く支持される人気の工務店へ。さらに同年、業界内で大きな話題を呼んだ超省エネ・高性能住宅「キューワン住宅」を発表。現在も福島の風土に最適化した科学的アプローチを提唱し続けている。

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